杉村敏之-雑記

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そう言えば、渡り廊下。

そう言えば、自分は「渡り廊下」が好きだった。唐突にそう思ったのは、息抜きがてら職場を抜け出した折、海へと向かう道中に渡された県庁舎のそれに注意が向いたからだ。

自分の通っていた中学校にも渡り廊下があった。
棟違いの音楽室へと向かう際に必ず通るそこは、陽当りがよく、規則的に並んだ左右の窓がいつも開け放たれている気持ちのよい場所だった。
そこを通るたび、文字通り地に足がつかない心許なさと、建物と建物をしっかりと結ぶ力強い機能に確かさを感じる矛盾が楽しく、毎度ほのかな高揚を覚えた。
想いを寄せていた異性の教室をよぎることもその高揚を後押ししていたかもしれない。いや、きっとこっちが本当だろう。

翻って、雑記という体裁をかりた日々の些事、身辺の泡沫を漫然と記すこの場所も、どこか渡り廊下に似ている。
ここは言葉を頼りに、自分の内側と外側の橋架けを目論む場所でもあり、表現と世界との接点とも言えよう。少なくともそう定めたのは他でもないかつての自分である。
と思うと、今さらながらに感じる強い愛着。もう少し更新頻度を高めるべきだ。
誰かのためではなく、大それた目標のためでもなく、ただ自身の束の間の高揚を引き寄せるために。