自分が担当している取引先のひとつが千駄ヶ谷にある小学校の真裏にあって、そこへ打ち合わせに出かけるたびにその小学校の前を通りがかるのだけど、つい先日はこの寒空の下で、体操着姿の男女が入り混じってソフトボールの試合をやっていてずいぶんと白熱をしていた。通りのこちら側から背の高い門扉の、格子状の隙間からのぞくようにしばらくその様子を眺めていたら、太った男子の頬を真っ赤に染めたのが立つ打席の下に敷かれたホームベースのずっと向こうの方から、炉でなにかを焼いたような焦げた匂いが子供らの無数の白い手足の間をすり抜けゆっくりとこちらに這ってきて、あ、冬の匂い、と思わず背伸び。
匂いに誘われたのもあるけれど、なんだかその白、白、白で埋め尽くされた風景は、自分の心象風景が丸写しに投影されているような気恥ずかしもあり、懐かしさもあり、上手く言えないけれどそれは砂っぽくて時折口の中でじゃりっと音をたてる楽しさと居心地の悪さの同居です。ああ、これはきっと同窓会をしたばかりのノスタルジー。白い風景が口の中でじゃりじゃり、そして、じゃりじゃりいってるぜぃ。