杉村敏之-雑記

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ぐらとぐら

本震のぐらと余震のぐら。
おっとろしかったね。腰が抜けたね。
裸足で事務所のビルを駆けだすと同じ通りに面した近くのビルの壁がホロホロと崩落してて、歩道が瓦礫の山になっていたね。
走る車を縫うように往来を横断して目の前の大きな公園へと避難したね。
少し落ち着いたところでほっとすると、指の爪がほんの少し欠けるという甚大な深手を負っていることに気がついて卒倒するかと思ったね。
広域避難場所となっている公園は、ヘルメットをかぶった会社員や近隣の飲食店から続々と人が流れてきて、あっというまにごった返したね。
公園の広場のほぼ中央には物見櫓のような背の高い遊具があって、怒号や悲鳴が飛び交う中、パンツスーツ姿の一人の女がいつの間にかカメラを構えてたっけ。
黒髪のボブのその女は手にもった一眼レフでピシッピシッという独特のシャッター音とともに連続的にぐるりの風景を切り取るとなんの感傷も残さずにそこから飛び降りてどこかに去った。報道関係の人なんだろうけど、その様を下から見上げていたら、無駄のない所作の美しさと落ち着き払った透徹とした眼差しがなんだか非常にかっこよくて英雄的で、ああ、あれはジャンヌダルクのようだった。