杉村敏之-雑記

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しがみつく。

年の瀬に壁時計をプレゼントしてもらった。それまで、自室には携帯電話以外に時計というものがなく、結構不便をしていた。そこでかねてよりの念願だった壁時計を贈ってもらったという次第だ。自宅に持ち帰り、簡易な包装をはがし時計を裸にした。時計のぐるりを囲む木目が美しく、文字盤に控えめな数字が並ぶデザインをぼくは気に入って…

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爪と月。

今日は目を覚ますとすぐに、部屋で爪を切った。ぼくは比較的よく爪を切る。少しでも伸びてくると、普段キーボードを叩く仕事をしているので結構気になるのだ。そして、これはいつもいい気分転換にもなる。切り立ての爪で弾くキーボードの感触はおろしたてのスニーカーで街を歩くのにも似ていて、心が弾む。楽しいな、気持ちいいなと思…

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空から降ってきた星、そして声。

火曜日の夜。ふたご座を放射点にした群れなす流星の活動が活発になるというので、頃合いを見計らった深夜、庭に出た。見上げた空には、思ったよりも電線が多く巡っていて、まるで五線譜のように漆黒の空を切り取っていた。朝からよく冷えた日で、放射冷却のせいか星は常よりもまたたいているように見えて、この空をぼくらが「星」と呼んで…

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雨の下、傘の下、赤いパンプス。

昨夜の冷たい雨。遅い時間、家までの帰途。アーチ型をした高架橋のちょうどてっぺんあたりで傘をさした女が一人立っていた。こちらからだと、ちょうど橋の向こう側で車が停まっているのか、女は地面を這い上ってくるヘッドライトを背負っている格好でその仔細は判然としない。ただ足下は橋のふもとにいるぼくからもよく見えた。朝から…

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メトロの神童。

JRと連絡する駅で2つ隣の席が空くと、戸袋の近くでベビーカーをひいていた若いお母さん、空いた座席の前でベビーカーにストッパーをかけ、回り込むようにしてそのベビーカーと向かい合わせにやれやれといった風情で腰をおろした。ベビーカーにちょこんと座りこちら側に向いたのは、マコちゃんと母親に呼ばれた、可愛らしい顔をした年の頃な…

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路頭の鶏は自由、宮内の鶏は妖しく口中の鶏は憐れ。

◇路頭の鶏◇先日のこと。上野の駅から東京国立博物館までの道すがら、恩賜公園の広場で、年の頃なら40前後、軍鶏のトサカのようなリーゼント頭を一様に激しく揺らし、身にまとったのは革製のジャンバーながら微塵も窮屈さを感じさせることなく生き生きと四肢を伸ばしてツイストを踊り散らしていている集団がいかにもアナーキーでオバカで格…

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あのチャリのミラーを覗き込んでいたら危なかった気がする。

有隣堂本店やかつての松坂屋があった伊勢佐木モールから一本桜木町側に路地を分け入ると、そこは福富町と呼ばれるちょっとした歓楽街で、ソープランドやらカジノやらの呼び込みが四つ辻のそこかしこに立ち、彼ら商売のかき入れ時となる夕方から夜半にかけては賑やかなことこの上ないのであるが、やはり歓楽街といえどもこのご時世、凋落の激しい…

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